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大阪高等裁判所 昭和44年(行コ)47号 判決 1972年2月18日

京都市右京区太秦石垣町二四番地

控訴人

岡部はる

同所同番地

控訴人

岡部義春

同所同番地

控訴人

岡部照子

右三名訴訟代理人弁護士

梅林明

稲垣貞男

京都市右京区西院花田町一〇番地

被控訴人

右京税務署長

木村祐一

右指定代理人

二井矢敏朗

池田孝

樋口正

中西一郎

村上睦郎

右当事者間の所得税更正処分取消請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴人ら代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人らに対し、昭和四〇年一一月二七日付でした訴外亡岡部徳治郎の昭和三七年度所得税額を金一、五九五、〇五〇円とする再更正処分のうち金一一一、一〇〇円を超える部分及び右訴外人の右年度所得税に関する過少申告加算税額を金七四、一五〇円とする賦課処分をいずれも取り消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人指定代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上、法律上の主張および証拠の提出援用認否は、次に附加するほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

一  控訴人ら訴訟代理人は、

「1 亡岡部徳治郎は、昭和三七年にその所有土地を小川に譲渡し、これに代る土地を買受けようと適当な土地を捜していたところ、同年九月ごろ、訴外高橋重吉らの仲介で本件取得資産乙地を紹介され、売買の話が急速に進行して、右九月ころに、徳治郎は、高橋に金二〇万円ほどの手附金(おさえ金との名目)を交付した。ところが、その後右二〇万円が宮本の手に入つていないということで同人から異議の申出があり、本契約締結が遅くなつた。それで、このままでは売買契約の成否が問題になつてはということも考えて、甲第二号証を作成したのである。以上のいきさつであるから、乙地の売買契約は、遅くとも昭和三七年一二月五日には締結されたものである。

2 かりに、乙地の売買契約が昭和三八年三月ころ締結されたものであるとしても、徳治郎の相続人である控訴人らは、免税措置の利益を受ける地位も相続して取得したものというべきであり、かつ、本件買換えが昭和三八年となつたのは、相続財産の確定、相続関係の処理、更には死者のための諸法要に追われてやむなく遅延したものであつて、租税特別措置法三五条二項(昭和三八年法律第六五号による改正前のもの、以下措置法という。)の適用を受ける場合に該当する。そして、この適用を受けるには申告を要するとしても、その申告もまた右事由によつてやむなく遅延し、昭和三八年四月の準確定申告に際してその意思の表示はなされたものである」

と述べ、当審証人広瀬武治郎、同宮本房次郎、同中村源治郎の各証言を援用し、乙第一四号証の一ないし三の成立を認めると述べた。

二  被控訴人指定代理人は、乙第一四号証の一ないし三を提出し、当審証人宮本房次郎の証言を援用した。

理由

当裁判所もまた、被控訴人のした本件再更正処分は適法であつて、控訴人の本訴請求は理由がないと認めるものであつて、その理由は、次に附加するもののほか、原判決理由第一ないし第三項に記載の原審の判断と同一であるからここにこれを引用する。

一、原判決八枚目表三行目に「第一〇号証」とある次に、「第一四号証の一ないし三」を挿入し、同じ行に「同宮本房次郎」とあるのを、「原審並びに当審証人宮本房次郎」と訂正し、同八行目に「岡崎宏の証言」とある次に、「当審証人中村源治郎の証言」を挿入し、同九行目に「乙第六および第一一号証」とあるのを、「甲第六号証および第一一号証」と訂正し、八枚目裏三行目から四行目にかけて「および」とある次に、「原審並びに当審」を挿入し、同五行目に「三月ごろ」とある次に、「以降」を挿入し、同八行目に「岡崎宏の証言」とある次に、「当審証人中村源治郎の証言」を挿入する。

二  控訴人らは、本件については措置法三五条二項が適用されるべき場合であると主張するが、同項は、納税者が納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合に、同条一項を準用していわゆる買換特例の適用を受けることができる旨を定めたもので、その承認を受けようとする者は、同法施行規則(大蔵省令)一七条の定めるところにより、承認を求める所定の手続をしなければならないことは、右各法条の文言上明らかであるが、控訴人らが右所定の手続をしなかつたことは、控訴人らの自認するところである。控訴人らが昭和三八年四月二六日にした準確定申告をもつて、右承認を求める旨の意思表示がこれに含まれているものと解することができないことは、いうまでもない。控訴人らのこの主張は理由がない。

三  よつて、控訴人らの請求を棄却した原判決は正当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡野幸之助 裁判官 入江教夫 裁判官 高橋欣一)

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